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- 伊方原子力発電所からの異常通報連絡
- 平成20年度(2008年度)
- 伊方1号機湿分分離加熱器1Aの蒸気噴出口の割れ
- 通報連絡日時:2008年4月30日11時35分
- 県の公表区分A
伊方発電所から通報連絡のあった異常について
異常の区分
管理区域該当:外 国への報告:なし 備考:今回発表
異常の内容
4月30日(水曜日)11時35分、四国電力株式会社から、別紙のとおり、伊方発電所の異常に係る通報連絡がありました。その概要は、次のとおりです。
- 4月30日(水曜日)10時40分頃、定期点検中の伊方1号機で、2号機の前回定検時の対策として、湿分分離加熱器の総点検を進めていたところ、湿分分離加熱器1A海側の蒸気入口から3番目の蒸気噴出口溶接部に割れを確認した。
- その他の蒸気噴出口溶接部には目視で割れは確認されなかった。また、天板と仕切板の溶接部については、割れは確認されなかった。
- 今後、割れの原因について調査を実施する。
- 2号機の水平展開として、天板端部16箇所を、当初の計画通り取り替えるとともに、湿分分離加熱器の溶接部の総点検を引続き実施する。
- 2号機の当該部位については、前回定検の総点検時に目視にて割れのないこと等を確認している。
- 本事象による環境への放射能の影響はない。
その後、四国電力株式会社から、その後の状況等について、次のとおり連絡がありました。
- 当該蒸気噴出口溶接部の割れは、複数箇所にそれぞれ約5cm~7cm。
- 音響監視装置を設置するなどの監視強化を行っていたが、運転中、異音等の異常は確認されていない。
- 1号機には4台(A、B、C、D)の湿分分離加熱器があり、1台の湿分分離加熱器に20個の蒸気噴出口があるが、目視点検の結果、他の79個の蒸気噴出口には異常はなかった。
- 通常運転中の2号機の湿分分離加熱器についても、異音等の異常はない。
調査結果等
5月7日(水曜日)17時20分、四国電力株式会社から、その後の調査結果等について、次のとおり第2報がありました。
- その後、当該蒸気噴出口については、原因調査のため工場に搬出した。
- 当該以外のすべての蒸気噴出口(79個)の溶接部の浸透探傷検査などを行ったところ、湿分分離加熱器1Aの1個(海側の蒸気入口から4番目の蒸気噴出口に2箇所)、1B・1Cの各1個(共に山側の蒸気入口から3番目の蒸気噴出口で1Bに2箇所、1Cに1箇所)の合計3個の蒸気噴出口に5箇所の割れがあることを確認した。
- 上記3個の蒸気噴出口を工場に搬出し、割れの原因を調査するとともに、今後引き続き、湿分分離加熱器の溶接部の総点検を実施する。
- 本事象による環境への放射能の影響はない。
県としては、八幡浜支局原子力安全室の職員を伊方発電所に派遣し、調査結果等を確認しております。
伊方発電所から通報連絡のあった異常に係る原因と対策について
推定原因等
湿分分離加熱器1A、1B及び1Cの蒸気入口から3番目の蒸気噴出口の割れの原因は、
- 内側側板と天板の溶接部に溶込み不足が発生し、応力集中が生じる形状で、十分なのど厚が確保されなかったこと
- 運転中の天板には、蒸気の流れによる高サイクルの流体加振力が作用することの条件が重畳したことにより、3番目の蒸気噴出口の内側側板と天板との溶接部に疲労限を上回る高サイクルの振動が生じ、疲労が累積して割れが発生し、蒸気上流側から次々と蒸気下流側の格子板間に割れが伝わるとともに、格子板本体に割れが進展していったものと推定される。
また、湿分分離加熱器1Aの4番目の蒸気噴出口の割れについては、まず3番目の蒸気噴出口の溶接部に割れが発生し、その後3番目の下流側にある4番目の蒸気噴出口の割れが発生したものと推定される。
当該溶接部に溶込み不足が発生した要因としては、溶接作業性の悪い狭隘な箇所の溶接部に、十分な溶込みが得られにくい溶接方法を採用したためと推定される。
対策
- 割れのあった蒸気噴出口も含め3、4番目(16個)を新品に取り替える。取替の際には、取替予定の1、2、10番目の蒸気噴出口(24個)も含めて、溶込み不足を解消するために十分な溶込みが得られるティグ溶接を行うとともに、補強等を行う。
残りの蒸気噴出口(40個)は、運転中の流体加振力による疲労に対し十分な強度が確保できるよう、溶接部の補修をティグ溶接で行い、さらに補強等を実施する。 - 運転中に割れの発生が考えられる流体加振力が作用する範囲において、浸透探傷検査が可能な全ての溶接部を検査し割れ等の異常がないことを確認した。なお、流体加振力が作用する範囲で十分な溶込みが得られにくい溶接方法を用いている溶接部のうち浸透探傷検査が出来ない4基で8部位については、強度に余裕を持たせる観点から補強を実施する。
また、2号機の天板割れの対応として、天板16箇所の取替と総点検を実施し、溶接部の健全性を確認するとともに、念のため4基で20部位の補強を実施する。 - 今後、溶接作業性の悪い狭隘箇所に溶接を施工する場合は、溶込み不足が発生しないような実施方法を選定するよう、発注仕様書で要求する。
- (4)伊方2号機については、1号機と同様の構造で同様な溶接施工のため、2号機としては新たにアコースティックエミッションを設置するとともに、音響監視装置等による監視強化を行い、次回定期検査において、1号機と同様な対策を実施する。
- 伊方3号機については、構造が1、2号機と異なり、同様な蒸気噴出口がないこと等から、対策は不要。
- 今後の対応として、伊方1、2号機の湿分分離加熱器については、全台を新たに製作しなおし、平成22年度から23年度にかけて取り替えることで、今後検討を行う。また、新たな製作に当たっては、社員を工場に駐在させる等品質管理に万全を期す。