■概略説明
コーディネーター 中村 浩美(科学ジャーナリスト)
【中村】
はい。ご紹介いただきました中村浩美です。よろしくお願いいたします。
今日はだいぶ激しい雨が午前中降っておりましたけれども、たくさんの皆様ご参集いただきましてありがとうございます。先ほど主催者の加戸知事さんの方からもごあいさつがございましたように、今日は四国電力伊方3号機プルサーマル計画の必要性と安全性について愛媛県の主催として慎重、推進それぞれの識者のパネリストの方をお迎えして議論を深めることによって県民の皆様にこのプルサーマルについての考え、認識を深めていただこうというご主旨のパネルディスカッションのご依頼ございましてコーディネーターをお引き受けいたした次第です。
本日の進め方ですけれども、まず最初に6人の皆さんにそれぞれのプルサーマル計画に対するご意見をお伺いします。そのあと6人によるパネルディスカッション、自由討論に入っていただきまして、休憩を挟みまして後半の方では会場の皆さん、今日は松山会場と伊方会場二つございます、伊方会場とは中継が繋がってございますので、松山と伊方と両方の会場の皆様から私がご質問をお受けする、ご意見をお聞きするとこういう形で進めて参りたいと思います。
早速パネルディスカッションなんですが、パネリストの皆さんのご意見をお伺いする前にこのプルサーマル計画につきましていろいろな知識もすでにお持ちの方もいらっしゃるかとは思うのですけれども、本日のパネルディスカッションの中で論点になるとか、パネリストの先生のこういう点を注目してお聞きいただきたいというご紹介も兼ねまして四国電力によります伊方3号機のプルサーマル計画の概略を私の方から簡単にご紹介をして、それからパネリストの皆さんのご意見を伺ってまいりたいと思っております。
会場が大変広くてスクリーンの方もなかなか見にくいと思います。お手元にこのような資料、伊方発電所3号機におけるプルサーマル計画の概要というものをお配りしてございます。これに従って私お話をいたしますのでお手元の方をご覧いただきながらお聞きいただきたいと思います。
まずプルサーマルなんですけれども、これは日本でつくりました造語です。外国へ行ってもプルサーマルというのは通用しません。日本でだけ通用しているものなんですが、プルトニウムを使うMOX燃料というものを原子力発電所、普通の軽水炉、これをサーマルリアクターと呼びますけれども、そこで燃料として燃やすこと。ここでプルトニウムのプルとサーマルリアクターのサーマルを合成いたしましてプルサーマルという言葉をつくったというものです。その軽水炉、普通の原子力発電所の原子炉でウラン燃料が熱を発して電気をつくってくれるわけですが、当然使い終わりますと使用済み燃料というものになりますね。これを再処理工場で一度処理をいたしましてプルトニウムというものを取り出して、そしてウランと混ぜたMOX燃料というものをつくり出して、このMOX燃料をまたウラン燃料といっしょに軽水炉に入れて燃料として燃やす。これが概略プルサーマルというもので、燃料のリサイクルというのが基本的な考え方になっております。
このウラン燃料とMOX燃料とどう違うかと言いますと、まずウラン燃料の方なんですけれどもウラン燃料と言いましても燃えやすいウランと燃えにくいウランとがあるんですね。実は燃えにくいウランの方が多いんですけれども。実際に原子炉の中でこれを使いますと使用済み燃料ということになるわけですが、そこには新たに核分裂生成物というものが出てまいりますが、燃えやすいウラン、燃えにくいウランどちらもまだ残っているんですね。それから新たに新燃料とは違ってプルトニウムというものもそこに含まれています。プルトニウムというのはウラン燃料が燃えている段階で原子炉の中で発生して、実は発電にも少し寄与をしているんですね。そういう形になるんですが、その中でまだ燃えやすいウラン、燃えにくいウラン、プルトニウムがある。これは再利用ができるという考えなんですね。そこでMOX燃料というのが出てまいります。使い終わったウラン燃料からプルトニウムを取り出しまして、燃えにくいウランなどと混ぜてMOX燃料というものをつくります。MOXというのは「Mixed
Oxide」という英語の混合酸化物というものの略称ということなんですけれども、このMOX燃料というのはこのプルトニウムとウランとを混ぜ合わせてつくるもの。これを使うのがプルサーマルということになってまいりますね。
このプルサーマルの持つ意味ということなんですが、実は昨年の10月に策定されました原子力政策大綱という中で、わが国はこのウラン燃料というものをリサイクルして使うという基本方針が決められたわけですね。それがプルサーマルに繋がるわけですけれども、なぜこのプルサーマルを行うのか、必要性はどうなのかということになりますと、いくつか書いてございますけれども、一つはエネルギーの安定供給ということです。ご承知のようにわが国のエネルギーの自給率というのは4%しかありません。食料で40%の自給率で問題になっておりますけれどもエネルギーはさらにその10分の1、4%の自給率しかありません。そういう中で安定供給のためにエネルギー資源の確保という意味合いがあるということなんですね。
それから環境適合性と書いてありますけれども、これは再処理をすることによって高レベル廃棄物、最終的な原子力発電におけるごみということになるわけですけれども、その潜在的な有害度ですとか体積、量ですね、それから処分場の面積、そういったものを低減できるということで廃棄物の最小化、それは循環型社会の目標に適合できるという考え方で環境適合性ということがいわれております。
それから経済性の方なんですけれども、実は原子力政策大綱というものを決めるときにはこのようなリサイクルをする方法と今アメリカなどでやっておりますように一度使った使用済み燃料というのをそのまま廃棄物として処分してしまう、直接処分と言いますけれども、こういう方法いくつか、実は四つなんですけれどもこれを詳細に検討した結果、再利用するという方向に決まるわけなんですが、そこで経済性の議論がいろいろ行われました。実際に再処理のために投資したこれまでの費用とか、もしこれを直接処分という形で政策変更したときに当然そこにもコストが発生してまいります。そういうものをトータルして考えますと、実は直接処分も再処理をしてリサイクルするのも同程度の経済性であるというのが最終的な判断でした。ただ、ここについては議論が分かれるところです。どの視点に立つかによって若干の意見の違いというのは当然出てくるというふうに考えられます。それから核不拡散性、MOX使用済み燃料の処理、こういったまだ未確定な部分の課題も含まれておりますので議論が当然分かれてくる。必要性についてもいろいろなご意見が当然出てくるというふうに理解をしていただきたいと思います。
つづいて四国電力で計画をしている伊方原子力発電所3号機の計画の概要なんですが、ここのところでは特殊な単位などが出てきますので難しいところなんですけれども、細かくは後ほどパネリストの皆さんがご紹介していただけると思っております。四国電力といたしましては平成22年度、2010年度までにこのプルサーマルを実施したいということです。原子炉の中に燃料集合体というものがあるんですけど、全体で157体あります。そのうちのMOX燃料の数は最大40体、およそ4分の1という計画です。そのMOX燃料の具体的なデータなんですけれども、プルトニウム含有率というのが出てます。燃料集合体平均約4.1wt%、ウエイトパーセントという単位なんですけれども、重量での割合を示す単位です。約4.1wt%濃縮ウラン相当以下というふうになっております。
それからペレット、焼き固めた燃料ですね。それについては13wt%以下。核分裂プルトニウムの富化度、これは核分裂を起こすプルトニウムの全体に占める割合ということになるんですけれども、8wt%以下。MOX燃料集合体最高燃焼度45,000MWd/tという単位なんですけれども、これは燃料1tがどの程度燃えたか、どれくらいの熱量を出したかというものを示す指標というふうに覚えておいていただいたらと思います。メガワットデイパートンという単位です。伊方3号機では実際にウラン燃料を濃縮度約4.8wt%以下、ウラン燃料集合体最高燃焼度は55,000MWd/tということで進める計画なんですが、これはこれまで使っておりました約3.8wt%よりも2段階濃縮度を高めた燃料ということになります。ステップ2高燃焼度燃料というような言い方をいたしますけども、4.8ということはステップ2燃焼度を高めた燃料だということです。これは日本では初めてのMOX燃料との併用ということになりますので、この点について安全性についてのご議論もあろうかというふうに思っております。ちょっと細かい単位が出て私も説明が難しいところなんですが。
MOX燃料の構造と、課題となる、あるいは議論となるテーマということなんですけれども、まずMOX燃料というものですがペレットという形になりますね。これは普通のウラン燃料の場合も同じなんですが、ペレットの材料が違うというだけで基本的には同じ形で、燃料棒というものにこれを集めます。その燃料棒を組み立てていって燃料集合体がつくられる。この辺は構造的には同じなんですが、しかし従来のウラン燃料と比べてMOX燃料の場合は燃料が溶ける可能性がある、融点が低いという言い方をしますけれども。それから燃料が破損されてしまう可能性があるんじゃないか。それからプルトニウムを使いますのでそのプルトニウムだけの塊、これをプルトニウムスポットと言いますけれども、そういうものができることによる影響が出てくるのではないか。さまざまな燃料自体に対する安全性に関する疑問、あるいは議論というものもございます。
それからMOX燃料を原子炉に装荷することによる影響ということで、一つは制御棒の効きが落ちるのではないかということになります。それからMOX燃料とウラン燃料を混合して使いますので出力のアンバランスがでるのではないか。それからほう素の効きの方にも問題があるのではないか。これは中性子を吸収しまして原子炉を止める役割を果たすものなんですが、そのほう素の効きが低下するのではないか。それ以外にもこのMOX燃料の取り扱いの問題や貯蔵の問題はどうなんだ。そしてもしも事故が起きたときに非常に毒性の強いプルトニウムというものを使っているのでその被害が大きくなるのではないか。あるいは従業員の人たちの被ばくが増えるのではないか。そのような懸念も議論の対象になっているところです。
主な論点を整理いたしますと、もちろんこれ以外にもこの後パネリストの皆様からここが重要な問題だというご発言があろうかと思いますけれども、今日のテーマであるプルサーマルの必要性と安全性ということで簡単にまとめますと、まず必要性については本当にエネルギーの安定性に寄与することができるのかという点。環境適合性は本当に満たされるのか。経済性についても問題はないのか。核不拡散という、プルトニウムというものを取り出しますのでそういう点での課題はないのか。それからMOX燃料を使用した後の最終的な処理というのはいったいどうなるのか。このような論点があろうかと思います。
安全性につきましては技術的な細かいところもあるのですけれども、先ほど言いました燃料それ自体についての、溶ける可能性があるんじゃないか。壊れる可能性があるんじゃないか。プルトニウムの塊ができることによる影響があるのではないか、制御棒の効きが悪くなるのではないか。ほう素の効きも低下するのではないか。さらには出力のアンバランスとか中性子照射量の増加とか高燃焼度燃料、難しい単位が出てきましたけれども、そういうものの組み合わせによるバランスの悪さというのもあるんではないか。燃料の取り扱いや貯蔵について、そして事故が起きた場合の影響について。さまざまな、実は論点というのがあると思います。それぞれについてパネリストの皆さんのお話の中でだんだん明確になってくると思っております。
不十分だったかもしれませんけれども、以上で簡単に私の方から今日のテーマである四国電力のプルサーマル計画というものがどういうものであるのか。どこに論点があるのか。簡単にご紹介をした次第です。 |
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