工藤 和彦(九州大学大学院工学研究院エネルギー量子工学部門教授)
それでは私は先程中村座長からの安全性についてのお話の後半3枚ぐらいに書いてありましたことについてお話をさせていただきます。
まず安全性の前に、今までMOX燃料が世界的に10か国で使われておりますけれども、どのぐらい実績があるかという数字を見ていただきたいと思います。一番右端が、これまで四国電力が伊方1、2、3号で使ってこられたいわゆる普通のウラン燃料。これが約2,500体。それで世界の10か国の56基の原子力発電所の中で使われたMOX燃料の体数が4,894体。四国電力で使われたウラン燃料の2倍の実績があるということをお話しさせていただきます。
先程アメリカはMOX燃料を使われないというお話をされておられましたけれども、昨年、解体した核兵器から取り出したプルトニウムを新たにMOX燃料として使おうということが、フランスに頼んで燃料を作り始めているということで、アメリカが新たに始めるという話も聞いております。
先程の座長のお話と同じですけれども、伊方3号炉で使われているウラン燃料は核分裂しやすいウランの割合が約4.8%であるというお話でしたけれども、右から2番目のMOX燃料においてはプルトニウムを大体9%ぐらい入れて燃料を作る。これがMOX燃料ということになりますが、このうちの核分裂しやすいプルトニウムの割合が約6%。こういった濃度についてはウラン燃料とほぼ同じだけのエネルギーを取り出す、そして温度などの条件がウラン燃料とほぼ同等の条件で使うことが出来るということのために決められたと聞いております。
座長のお話にありましたように、既に今の伊方1、2、3号炉の中で使っているウラン燃料の中でも燃えにくいウランがプルトニウムに変わって原子炉の中で核分裂を起こしてエネルギーを発生しているというお話がありました。それが年間を通じて言いますと、発電量あるいはエネルギー量と言ってもよろしいですけれども、これが左側にありますように現在でも30%が実はプルトニウムが核分裂して、プルトニウムが燃えて発電をしているという状況です。
今回、伊方で計画されております約4分の1の燃料をMOX燃料に置き換えた時の、これがプルサーマルと言うわけですけれども、この時の状況が右側でありますけれども、プルトニウムによる発電量が50%になるというこれだけの違いが生じるということです。年間を通じると少し傾きが出てはまいりますけれども、発電総量で言うとこのような状況だということです。
そして安全性に関していろいろと座長もお話しされました。それを私なりのまとめ方でまとめたものです。まず燃料そのものが大丈夫なのかというのが一つの関心であろうかと思います。先程もお話がありました、燃料が溶けやすいのではないか。あるいはガスが発生して圧力が高くなるのではないか、プルトニウムスポットというものが起き得るんですけれども、これがどのような影響があるかといったような安全性に関する燃料そのものに関するポイントがあります。
それから原子炉全体の挙動に関しても幾つか取り上げられている問題点がございます。これも今からお話をさせていただきます。制御棒の効きが悪くなると出力の変動に対して安定性が十分であるか。それから燃料の出力分布。それから全体の出力分布とか温度分布が大丈夫か。そして伊方で使われておりますステップ2燃料と申しますけれども、これとMOX燃料とを合わせて使うことに影響はないのかといったようなことです。
これらについてこれから後の議論の中で細かくはお話しさせていただきますけれども、ごくごく簡単にお話しさせていただきますと、燃料の溶融点というのが70℃から80℃といった程度変わるということは分かっております。制限値、または規制値と申しておりますけれども、これは溶融点の2,800度よりも遙かに低い温度に設定されており、実際の原子炉の中でもその制限値を十分下回る温度で運転出来るということが確認されております。
燃料棒の中の核分裂性ガスの圧力も確認されておりまして、これも規制値を下回っているということが分かっております。
プルトニウムスポットがあることに関しては、これによって温度が多少上がることがあっても、それが燃料棒を傷めるとか健全性に影響があるといったようなことはないということが確認されております。制御棒の効きは、ここに示しておりますように規制値で定められております必要な余裕を現在の炉心もMOX燃料炉心も十分クリアしているということでございます。
出力を十分に平坦化するためにMOX燃料を4分の1配置するという時の、この赤い位置が一つの例でございますけれども、こういうところに入れると、全体としてウラン燃料とほぼ変わらない出力分布が得られます。
つぎが非常に説明しにくいことでありますけれども、出力が急に変化した時の制御性、ゆっくり議論の中でご説明させていただきたいと思いますけれども、むしろMOX炉心は安定性という意味では良くなるという結論も出ております。燃料の出力分布、温度分布も燃料設計の工夫によりまして十分余裕を持って安全性が確保されているといったようなことであります。これも燃料の組み合わせ方の具体的な例を示したものでありますけれども、これによって十分に規制値をクリアして安全性が確保されるということであります。
最後に、事故を想定した場合においてまず大事なのは原子炉の核分裂を確実に止めるということ。そしてなお原子炉の中に残っている熱を十分取り去ってやる、いわゆる冷やすということ。そして最も重要なことは、たとえ燃料が一部壊れるというようなことがありましても、それによって出てくる放射性物質を確実に閉じ込める、外に放出しないことです。これが一番大切と思っておりますが、この機能がきちんと働くかということも評価されていて、MOX炉心とウラン炉心というのはいろんな事故――これは1つの例でございますけれども、について大きな差がなく終息することが出来るということが確認されております。
一番後の、放射性物質の放散を止めるということに関しては、原子炉の格納容器――これはどの原子炉にもついております――これで十分に拡散を防止することが出来るという結論が出ております。こういった安全性に関するお話を後程十分させていただきたいと思います。
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